MATSURICAの新しい作品「Birds stay」について少し書きます。
前回の「Initial」と同様、色味を抑えた渋めの作品となりました。
鮮やかな絵も淡い色の絵も、個人的には大好きですし、
描いている途中の鮮やかで美しい色合いが出せた瞬間は、本当に心が揺るぎました。
でも、求めているのはそういうことじゃなく。
「Initial」「Birds stay」とつづき、(‥あれ?)と思われた方もいるかもしれませんが
オオカミとカラスの表現が変わっています。
それは、私の中で彼らの位置が大きく変化したことが原因かもしれません。
これまでは自然の一部の獣と鳥だったレムとカフカが、
大口真神と八咫烏が神化して再降臨したような‥そんな感覚です。
正確には神の遣いですが、そのような神聖な存在ですから、しっかりと地に足をつけてそこに居るといいうよりも、目を逸らせば消えてしまいそうなくらの儚さを。そして、どこか妖艶で、血が通う肉感を感じさせない存在であってしかった。
また、これまでの作品と決定的に違う部分があと2つあります。
一つ目は、最初に筆を使い、紙に描くことから始めており、それは練習とか下書きという意味ではなく、それ自体がその作品の序盤となります。その水彩・アクリル画を元に、デジタルペインティングを施していく手法です。これまで、デジタル作品の味出しのためにアナログの風合いを取り込むことはありましたが、ここまで筆で描き込んだ後にデジタル化させることはありませんでした。
2つ目は、意気込みに変化があります。強いとか弱いということではなく、これまでは、オオカミとカラスを精巧に描き出してあげたいという感覚で制作してきましたが、「Initial」「Birds stay」では、「描かせて頂く」という、これまでにない感覚が芽生えました。それはやはり大口真神と八咫烏に神化されたという感覚がそのようにさせるのではと思います。そのような神聖な存在を私のような者が描かせて頂くのですから、なんとなく仕上げたり、手を抜くことは許されません。常に気持ちを引き締めて制作をしていました。
さて、作品の技法や気持ちの部分でつらつらと綴りましたが、MATSURICA個展まであと2ヶ月ちょっとです。あと何作創れるかな。頑張ります。
MATSURICAより。